《 幼 き 頃 》
『 想い出は時空を超えて、幼き頃の我に出会わせてくれる 』
見上げると、青い空に白い雲、左手には、薄茶色の大地の上に緑の
草原が広がる。更に、山々も濃い緑の衣に身を包み、優しく微笑ん
でいる。右手には、眩しく銀色に輝く大海原が広がっている。其の
遥が向うで、神秘のオーラを、品のある美しき羊蹄山が放っている。
5号線を北上しながら、上も下も、右も左も、前も後ろも、自然界
が、この俺を包んでいる。我が五感、六感を刺激し、魂は止むなく
ロックンロールされる。そしてこの俺も、自然の一部である事を自
覚させられる。
海岸沿いを歩いていると、潮風が磯の香りを、俺のもとに運んでく
れる。其の香りは、忘れていた懐かしき想い出を、再び、今起きて
いるが如く、我が脳裏に写し出してくれる。
小学生になった許りのまだ小さい頃、俺の家族はある時期、葉山の
海を見渡せる、丘の上の素敵な一軒家に住んでいた。俺は夏になる
と、浮き袋を、小さな腕の脇の下に抱え、磯の匂いが香る湘南の海
へとよく出掛けて行った。俺は一日中、海と戯れ、海と遊んだ。
海の荒々しさも、其の優しさも……海に揉まれ、海を恐れ、海を楽
しみ、海に笑い、そして、涙した。
海は何時しか、俺にとっては欠かせない友となったのである。
あれからもう半世紀の時が過ぎ去ってしまったが、振り返ると人生
の処々で、海は行き詰まった俺を慰めてくれた。
また言い様のない悩みを抱えていた俺を、優しく包んでくれた。そ
して今も、海は俺にとって、欠かす事が出来ない友なのである……。
そんな想いを巡らしながら歩いていた俺は、八雲町から長万部に辿
り着いた。想い出が過去と現在を一つにし、時間と空間を越えて、
我が魂が解放された一日の様であった。
『 海と戯れ、海と遊ぶ。海は、俺の笑いも涙も知っている 』
2012.8.19 アーサー・ホーランド
昨日の写真





